もうすぐラマダン。西アフリカ・セネガルで見るイスラム文化

     
ラマダン

2017年のラマダン期間は5月27日ごろに始まります。日にちを限定しないのは場所(地域)や月を見る人によって認識がまちまちだからです。しかし大きくずれることはありません。1日~2日前後するだけです。
ラマダン(月:新月~次の新月まで)は肉眼で確認するという結構アナログなやり方です。そのため見る人や地域によってちょっとずれたりします。多くのところでモスクやテレビ、ラジオで開始を知らせるアナウンスがされます。このラマダンの時期が近づくと、老若男女が空を見上げて月(新月)を確認している光景に遭遇するかもしれませんね。
正確には“ラマダン”はイスラム教が用いるヒジュラ暦(月の満ち欠けをもとにした太陰暦)の第9番目の月のことです。このラマダン月に行うのが“サウム”といわれる断食です。ラマダンは断食することと勘違いしている人もいますが、あくまで月の呼び名です。(ラマダン、サウムはアラビア語)

西アフリカ・セネガルのラマダン

アフリカでも北アフリカから西アフリカ諸国はイスラム教徒が多い地域です。西アフリカのセネガルも90%以上がイスラム教徒です。そのために日常生活も国の祝日にもイスラム教が影響しています。
ラマダン(サウム)もその一つです。イスラム教徒にとっては「サウム(断食)」は信者が守るべき五行の一つのため必ず行います。おもしろいことにセネガルではラマダン月のことを“Kôr/コル”(ウォルフ語)と言い、断食することも同じKôrです。ちなみにフランス語では“jene”と言います。

このラマダンに関連して有名なのが犠牲祭ですが、セネガル(南アフリカ)では“Tabaski”と呼ばれています。これもセネガルでは12番目の月の名前として呼ばれています。(一般的にはZoul Hidah=12番目の月、Edu ul-Adcha=犠牲祭)

疑問:ラマダン中の断食について

素朴な疑問としてラマダンの期間中はどんなことをしているのか?ということが挙げられると思います。日が昇る1時間ぐらいまでに食事をすませ、日中は一切飲食を絶ち、日が完全に落ちてから食事を再開します。
この時の食事をセネガルは、
断食開始:Kheud(ケーッド)/パンやミルクなど朝食にあたるもの。
断食終了Dogue(ドッグ)ナツメヤシの実、あたたかいコーヒー、ミルク、パン等
と言って特に断食終了の食事はみな楽しみにしています。その後、次の朝食まで普通に食事します。私たちに悩ましいのが、この時期食事が不規則になるための準備が大変なのと、逆に不健康では?という疑問がつきまとうことです(不謹慎ですね)。

ナツメヤシの実

ナツメヤシの実
デーツとも呼ばれ、イスラム教では「神の与えた食べ物」としてコーランにもたびたび登場します。1日の断食終了後にまずナツメヤシの実を食べるのは、預言者ムハマドが行っていたため、ムスリムの間では習慣として最初に口にします。栄養価が高く、空腹の胃に刺激を与えないという意味でも日常的に食べる人も多いようです。

ラマダン中は配慮が必要

イスラム教徒にとってラマダンは信仰を再認識する神聖なものです。また断食によって貧困に苦しむ人の苦しみを感じ、同じ体験を共有することでイスラム教の同胞との一体感を高める副次的な意味もあります。

イスラム教徒の多い国や地域では、イスラム教徒の習慣に敬意をもって接することをおすすめします。もし、機会があれば、同じように一日でも断食をしてみてはどうでしょう。現在、困難にある人々や周りの人への共感につながるきっかけになるかもしれません。

また、国や宗教にもよりますが、ラマダン期間中は娯楽施設の営業を取りやめる、あるいは営業時間を大幅に短縮するところもあります。娯楽が堕落への誘惑になるという極端な解釈ですが、この時期は娯楽施設へのテロが多いことも事実です。

イスラム教は何かと規制が厳しいことが周知されていますが、最近では緩和傾向にあります。2018年4月には戒律が厳しいことで知られるサウジアラビア(メッカの総本山がある)で、実に35年ぶりに公共での映画が解禁されました。その第1作目がアメリカのマーベルコミックが原作の『ブラックパンサー』です。その選択基準はよくわかりませんが、時代も変わりつつあるという象徴的な出来事です。その評判はどうなのか知りたい気もする……。イスラム教徒も“怖い”イメージばかりではないことを知るいい機会ですね。

もっとイスラムについて知りたい人には>>イスラミックセンタージャパンが参考になります。